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コルトアムク・リーム
【妖精の章・二】
燦々(さんさん)と指す日の光が照らす中、森に囲まれた葉の物の農業地帯の一帯の小さな川にかかった石製の橋があった。
その橋の根元の部分で、少しの揺れとくぐもった声のようなものが聞こえてくる。
「………わよ!…………いわ………岩よ!」
地面の中から聞こえてくる、連続したかけ声が聞こえた瞬間、地面を裂いて人間大の岩が飛び出してくる。
岩は轟音と土煙をまき散らしながら、その主人の姿を現す。
地面の暗がりから出てきたのは、水色の髪にメッシュの入った痩せ型の青年である。
青年は長袖の上着と足首まである腰着を身にまとっているが、ひどく土に汚れた印象である。
青年は「ふぅ」と息を一息つくと、久しぶりの陽光に顔を焼かれる。
そのまぶしさに戸惑いながら、青年は左腕の長袖が輝いていることに気づく。
袖をまくると自身の腕に刻まれた文字を目にする。
「これは……」
『すべての魔術書を焼きつくせ』
青年の左腕に薄く緑に輝く文字は人間では読めないような不思議な字体でそのように書かれていた。
青年はこの文字をよく見慣れていた。
「まだ終わっていないってことか……。あれだけの戦争をすぎてもまだ……」 青年は悔しいような悲しいような、そんな苦悶の表情を浮かべると、悲しく笑った。
ふいに、そこに近づく影があった。
「おーい、そこのお前さん、大丈夫かね?」
つづく
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