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コルトアムク・リーム
【妖精の章・番外1】
人間の及ばぬ遙か西の、魔術によって隠れた木々の間に、妖精の築き上げた国があった。
妖精たちは高度に発展した魔術によって穀物や野菜を中心とした緻密農業生産国として成り立っていた。
水は涸れることがなく、木々と語り合い、空気は澄んでいて妖精は平和な治世を謳歌していた。
この国が出来てはや500年、初代にして長き治世を行ってきた賢王である、 妖精王ラブ・ド・ライルは悩んでいた。
彼にははじめて子供が生まれようとしていた。
妖精の間には滅多に子供が出来ない。
妖精は自然と近しいため繁殖の必要性が薄く、国土も広くはないためこのような自体はまれなのである。
「うーむ…」
執務室である部屋には長い樫の文机と樫の椅子がひとつ。
机の上には大量の古い書物が置いてあった。
妖精王は頭をひねって首をかしげては、古い文献を読みあさる。
彼が悩んでいるのは、そう 生まれてくる子供の名前である。
悩んでうろつこうと椅子を立ち上がると膝を机にぶつけてしまう。
ガタンッ
バサバサバサ 音を立てて何冊かの本は落ちて開いてしまう
「おっととと…」落ちた一冊の本の開かれたページに目がとまる
「ドリーム……夢、あるいは夢を見せるもの……?」
王はハッ!とすると駆け出す。
我が子の元へとはせ参じるためである。
一番最初の贈り物を、するために。
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