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コルトアムク・リーム

番外編用2 【西の森のビトゥカ】

アウグレアスの蒼月の炎から450年─かつて妖精の国があったとされる西方の地には耳の長いエルフ(森妖精人)とよばれる種族が集落を築き上げていた。

エルフは独自文化形態の中で魔術、棒術、舞踊に長けていた。木々の中にあり、その容姿はあまり変わることがない。

20年ほどで大人までの成長のプロセスを終えて、そこからは魔術を行使するための力量によって老いて朽ちていく長さが変わる。

この世界の人間という種族より10~20倍長く生きるだけで他は何も変わりはしない。肉も野菜も穀物も食べる。

そんなエルフの集落でとある満月の夜にすやすやと寝息を立てる一人の女性があった。

木造の家に簡素な木のベッドに麻に似た繊維のベッドシーツである。

女性は20ほどの見た目であろうか、美しい容姿に特徴的な長い耳、滑らかな布地の体のラインが見える服を身にまとい、ベッドの脇には木で出来たサンダルがあった。

いつもと変わらない睡眠を取っていた女性は夢の中で彼女たちの信奉する神から神託を受けた。

夢の中、暗い闇の中に彼女と神の光だけがあり、神が次のように語りかけてきた。

これよりおよそ五十の年月のあと蒼月の炎と共に王の住まう都にあれ 女性は神託を受けたときに跳ね起き、急いで集落の長の元へと向かった。

エルフたちにとって深夜とも言える時間にやってきた訪問客に長は驚いた。

長は40代に見える容姿でがっしりとした肉体を持った少し浅黒い男性のようである。

「ビトゥカ!こんな時間にどうした?なにかあったのか?」

長、オイゲンはいぶかしむように彼女、ビトゥカに声をかけた。

「神託を受けました」 息を切らせながらそう答えたビトゥカに夢のあらましを説明されると長はうなった。

このエルフたちにはこの200年伝わる口伝があり、いずれ訪れるその時に神託の巫女が集落の外に出る、ということであった。

このことを察したのか長は苦虫をかみつぶしたような顔をする。

「まさか、舞踊の巫女が選ばれるとは、な。すぐ行くのか?」

ビトゥカは真剣な面持ちでこくり、と頷いた。

長は家の壁に掛けてあった木の槍杖を持つとビトゥカに渡してきた。

「これは神木の槍杖だ。お前ならうまく扱えるだろう。さぁ、神託に従い素早く行きなさい。」

ビトゥカは槍杖を受け取ると家に戻り素早く旅の支度を整えると深夜のうちに集落をあとにした。

暗がりに家族たちを残し、ビトゥカは向かう

王都ピルラントラへと。

外伝二 了

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