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コルトアムク・リーム

妖精の章・一

その日、人類は恐怖の存在との決着をつけようとしていた。

妖精──
人類史にはそれまで一切存在せず、突如として西方の森より顕(あらわ)れたそれは、登場からわずか一年ばかりで人類の三割を人間の扱えない奇っ怪な術である魔術によって殺し尽くした。
西の大王国であったアウグレアスは滅び、今は焦土が残るのみである。

人類は同盟を結び、連合国軍は妖精によって焼き尽くされた西の焦土を戦場とした。

戦場の中心。多くの妖精の死体と人間の死体が重なり合い、今でも戦火の上がり続ける激戦区で最後の激闘が繰り広げられていた。

激戦区の中央部、互いの死体に囲まれ激しい攻撃の音が鳴り続ける。そこには二方に分かれた勢力があった。
一方は水色の髪にメッシュを入れた痩身の鎧姿の青年が切りつけられた腕から血を滴らせながら、魔術を帯びており、
もう一方は、いくばくかの歴戦の勇士たちが剣や斧を持ち、傷だらけになりながらも青年を囲もうと、にじり寄っていた。

歴戦の勇士たちは互いに合図すると猪突のように激突しながら口々に叫ぶ
「ついに追いつめたぞ!!妖精王■■■ ■■!!
貴様の悪逆、我らが許さぬ!!」
突撃をした勇士は妖精の帯びていた魔術の光に焼かれ、美しい蒼いチリとなって消えていく、しかし勇士たちは勢いを衰えさせず青年の体力を削っていく。

小柄な騎士然とした勇士の下段からの剣戟と大柄な鎧の勇士の斧の斬撃が水色の青年の鎧をとらえ、肉を割いた。
肉を割かれ、人間ならばまさに致命傷ともなる一撃を見舞われた青年は口から血を滴らせながら薄く笑った。

「森羅万象…」
青年の魔術は蒼くまばゆい月のような美しい瞬きを起こしながら天へと舞い上がった。
かの妖精王の死を勇士たちが確認し、勝ちどきをあげたのもつかの間、
焦土全体に大熱量が生じることになる。

人類史に残る最古の記録には、こう記されている
「アウグレアスの蒼月の炎」、と

 

つづく

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